静岡県で一家4人が殺害された58年前の事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審で無罪判決 冤罪の温床・静岡県警

静岡県で一家4人が殺害された58年前の事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審で無罪判決 冤罪の温床・静岡県警

58年前に静岡県で一家4人が殺害された事件について、静岡地方裁判所は県警による証拠の捏造を認め、死刑が確定していた袴田 巌(いわお)さん(88)に無罪判決を言い渡しました。

58年前の1966年、静岡市清水区でみそ製造会社の専務一家4人が殺害される事件が発生し、当時、同社に住み込みで働いていた袴田さんは逮捕され、裁判を経て死刑判決を受けることになりました。

静岡県警の捜査官らは、袴田さんから自供を引き出すために、連日10時間以上もの取り調べや脅迫、拷問を繰り返していた上、証拠を捏造するなどし、無理やり袴田さんを犯人に仕立て上げていたことが明らかになっています。

◯長時間にわたる拷問まがいの取り調べで強要された自白

事件の発生から1年2か月後、事件現場の近くにあった味噌タンクから血痕の付いた「5点の衣類」が発見され、それが有罪の決め手となりました。

しかし今回の判決で、國井恒志裁判長は「1年以上味噌に漬けられた場合に血痕に赤みが残るとは認められず、『5点の衣類』は事件から相当な期間がたった後、捜査機関によって血痕を付けるなど加工され、タンクの中に隠されたものだ」と指摘しました。

続けて、國井裁判長は「袴田さんの自白は非人道的な取り調べで得られたため任意性に疑いがあり、当時の裁判で無罪の可能性が否定できない状況にあった。衣類を犯行時の着衣としてねつ造した者としては、捜査機関以外に事実上想定できない」と述べました。

その上で、「味噌タンクから発見された5点の衣類」、警察が袴田さんの実家を捜索した際に見つかったとされる「5点の衣類のズボンの切れ端」、「自白の任意性を認めていた1通の調書」のあわせて3つの証拠について、「捜査機関がねつ造した」と判断し、「袴田さんを犯人とは認められない」として無罪を言い渡しました。

國井裁判長は、判決を言い渡した後、袴田さんの姉のひで子さんに対し言葉を詰まらせながら以下のように述べました。

再審の初公判でひで子さんは巌さんに『真の自由を与えてほしい』と願われました。

無罪判決が言い渡されましたが検察は控訴する余地があり、審理は続く可能性があります。

無罪が確定しないと意味がありません。

巌さんに自由の扉は開けましたが、まだ、閉まる可能性はあります。

ものすごく時間がかかっていて、裁判所として本当に申し訳なく思っています。

有罪か否かを決めるのは検察でもなく裁判です。

確定するにはもうしばらくお待ちいただきたい。

真の自由までもう少し時間がかかりますが、ひで子さんも末永く心身ともに健康であることを願います。

この判決を受け、静岡地検は「検察としては必要な立証を行ってきたが、裁判所にこちらの主張・立証を評価していただけなかった」とし、控訴するかどうかについては「法と証拠に基づき、判決内容を精査してから、上級庁と協議した上で判断したい」と述べるに留まりました。

また袴田巖さん本人は、死刑執行の恐怖と半世紀近い拘留によって精神を病み、「拘禁症状」が現在も色濃く残っているため、意思疎通が難しく、法廷にも出廷できませんでした。

静岡県内では戦後、袴田事件の他にも4件の冤罪事件があり、「冤罪王」「昭和の拷問王」と呼ばれた紅林麻雄(くればやしあさお)とその部下らが証拠の捏造や拷問を繰り返し、無罪の一般人を犯人に仕立て上げるといった暴挙を繰り返してきました。

袴田さんもまた、紅林麻雄の部下たちによって強引に自供させられ、無実の罪により47年7カ月にわたって勾留されることになりました。

腐敗した法曹界が浄化され、二度と同じ過ちが繰り返されることのないよう心から祈ります。

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