鹿児島県警の本部長が女子トイレを盗撮していた警官の事件を隠蔽 隠蔽した情報を内部告発した元警官が内部情報漏洩で逮捕 不正を暴いた内部告発者は、公益通報者保護法に基づき保護される立場

鹿児島県警の本部長が女子トイレを盗撮していた警官の事件を隠蔽 隠蔽した情報を内部告発した元警官が内部情報漏洩で逮捕 不正を暴いた内部告発者は、公益通報者保護法に基づき保護される立場

鹿児島県警が、県警職員による盗撮事件などを隠蔽し、さらには内部告発者の元警視正を内部資料漏えいの疑いで逮捕したことが判明し、大きな波紋を呼んでいます。

内部告発を行った本田尚志(60)は、瀬戸内署長や鹿屋署長を経て2021年に警視正に昇進、2022年3月に鹿児島県警生活安全部長に就き、2024年3月25日付で警視長に昇進するとともに、同日付で退職しています。

本田尚志が現職だった昨年12月、枕崎市の女性用トイレで盗撮事件が発生し、犯人は枕崎署の地域課巡査部長・鳥越勇貴(32)であることが発覚しました。

この事件が現職の警察官による犯行だったため、野川明輝(のがわあきてる)本部長の指揮下で捜査が行われる予定でしたが、野川本部長は「(犯人に)最後のチャンスをやろう」「泳がせよう」などと言って、捜査指揮簿に印鑑を押さなかったとのことです。

野川明輝本部長

さらにその後、一般市民からの情報をまとめた「巡回連絡簿」を悪用し、警察官が行った他の犯罪行為についても、野川本部長の手によって隠蔽され、現在もそれらの事件の詳細は明らかになっていません。

本田尚志は、自身が定年退職となった後も、これらの事件が公表されることはなかったため、不都合な真実を隠蔽しようとする県警の姿勢に失望し、事件隠蔽の証拠となる警察の内部文書を、札幌市在住の記者に託すとともに内部告発を行ったとしています。

しかし、内部告発を知った鹿児島県警は、内部文書を第三者に郵送し、職務上、知り得た秘密を漏らしたとして、先月31日に本田尚志を国家公務員法違反の疑いで逮捕しました。

今月5日には、本田尚志の勾留理由の開示を求める手続きが鹿児島簡易裁判所で開かれ、弁護士は、「私利私欲のためではなく、公益のために愛していた組織をよくしたいという思いでやった。勾留は不当で早急に釈放を求める」と述べました。

しかし、鹿児島簡易裁判所は本田尚志の勾留取り消し請求を却下し、これを不服として代理人弁護士が6日、却下を取り消すよう求める準抗告を行いました。

この際、出廷した本田尚志が意見陳述を行い、鹿児島県警による隠蔽の実態について詳細に語り、その全文がマスコミに公開されました。

意見陳述の全文:

今回、職務上知り得た情報が書かれた書面を、とある記者の方にお送りしたことは間違いありません。 私がこのような行動をしたのは、鹿児島県警職員が行った犯罪行為を、野川明輝本部長が隠蔽しようとしたことがあり、そのことが、いち警察官としてどうしても許せなかったからです。

野川本部長は、令和4年に赴任されました。 野川本部長は、独断ですべてを決められる方で、我々の考えを本部長に提案しても、本部長の一存で否定されることが多く、多くの職員が疲弊し、考えても無駄だという雰囲気が広がっていきました。

そんな中、令和5年12月中旬、枕崎のトイレでの盗撮事件が発生しました。 この事件で、容疑者は、枕崎署の捜査車両を使っており、枕崎署の署員が容疑者であると聞きました。

この事件は、現職の警察官の犯行ということで、野川本部長指揮の事件となりました。

生活安全部長として、この事件の報告を受けた私は、現職の警察官がこのような犯罪を行ったということに強い衝撃を受けました。

当時、既に複数の警察官による不祥事が発覚しておりましたので、県警の現状に危機感を抱くとともに、県民の皆様に早急に事実を明らかにして、信頼回復に努めなければならないと思いました。

我々としては、当然、早期に捜査に着手し、事案の解明をしようと思いました。 そして、私は、捜査指揮簿に迷いなく押印をし、それを、野川本部長に指揮伺いをしました。

しかし、野川本部長は、「最後のチャンスをやろう。」「泳がせよう。」と言って、本部長指揮の印鑑を押しませんでした。 この時期は、警察の不祥事が相次いでいた時期だったため、本部長としては、新たな不祥事が出ることを恐れたのだと思います。

私は、本部長が警察官による不祥事を隠蔽しようとする姿にがく然とし、また、失望しました。 県民の皆様に申し訳が立たないと思いました。 私は、いち警察官として、目の前に犯罪があり、容疑者も分かっているのに、その事実を黙殺しようとする姿勢が理解できず、心底腹が立ちました。

県民の皆様の安全より、自己保身を図る組織に絶望しました。 そんな中、現職警察官による別の不祥事が起こりました。 それは、警察官が一般市民の方から提供を受けた情報をまとめた巡回連絡簿を悪用して犯罪行為を行ったというものでした。 この件についても、現職警察官の事件ということで本部長指揮の事件となりました。

私は、この件についても、県民の皆様の信頼を失う行為であることから、この事実を県民の皆様に公開し、説明すべきだと思いました。 しかし、この事件も、明らかにされることはありませんでした。 私は、不都合な真実を隠蔽しようとする県警の姿勢に、更に失望しました。 私は、今年の3月で、警察官の職を定年で退職しました。

ですが、私が定年退職する時期になっても、枕崎の件も、別の不祥事の件も公表されることはありませんでした。 私は、警察官として、「嘘を言うな。隠すな。」との教育を受けてきました。 不祥事があった場合には、それを隠すのではなく、県民の皆様に明らかにした上で、改善を図っていくべきだと思っていました。

しかし、現状の鹿児島県警は、その教えに反し、事実を明らかにしようとしませんでした。 私は、自分が身をささげた組織がそのような状況になっていることが、どうしても許せませんでした。 私は、退職後、この不祥事をまとめた文書を、とある記者に送ることにしました。

記者であれば、個人情報なども適切に扱ってくれると思っていました。 マスコミが記事にしてくれることで、明るみに出なかった不祥事を、明らかにしてもらえると思っていました。 私が退職した後も、この組織に残る後輩がいます。

不祥事を明らかにしてもらうことで、あとに残る後輩にとって、良い組織になってもらいたいという気持ちでした。

実際、私が送った文書がきっかけになったと思いますが、枕崎署の署員の事件は、今年の5月になって、署員が逮捕されることとなりました。

今回、私が行った行為により、多くの方々にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ないと思っています。

ですが、私としては、警察官として、信じる道を突き通したかったのです。 決して自分の利益のために行ったことではありません。 鹿児島県警においては、間違っていることは間違っていると認め、県民の皆様に、再び信頼してもらえる組織に生まれ変わってくれることを心より願っております。

こうした中、野川本部長は6日になって、ようやく報道陣の問いかけに応じましたが、「(意見陳述で)主張のございました2つの事案については、当県警察において被疑者を逮捕するなど、いずれも必要な対応がとられている。被疑者の主張については、事件捜査の中で必要な確認を行っていく」と述べるに留め、実際に隠蔽を行ったかどうかについては言及しませんでした。

これまで鹿児島県警は、盗撮を繰り返していた警察職員を野放しにしていましたが、今年5月13日になってようやく逮捕し、取り調べの結果、2023年3月〜12月の間に同じ女性に対し、計12回もの盗撮が行われていたことが判明しています。

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鹿児島県警では不祥事が相次いでおり、わずか2ヶ月の間に盗撮と建造物侵入の疑い、第三者に流出させた地方公務員法違反の疑い、知人女性の体を触るなどした不同意わいせつの疑いで現職警察官3人が逮捕されています。

本来、不正を暴いた内部告発者は、公益通報者保護法に基づき、保護されるべき立場にあります。

にもかかわらず、鹿児島県警が本田尚志を逮捕、拘留したため、「告発された側の県警本部長の指示もしくは了承のもとでそのような人を逮捕するのは、それこそ違法」「内部告発者を訴えるとか1番やっちゃいけんやつやん」「もう警察を監視する組織必要だよね」と、県警に対する批判が高まっています。

ありとあらゆる不正の実態が明らかにされ、公正公平な社会が訪れますことを心から祈ります。

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